2016-06-17

戦世を訪ねて 2008~2015

   
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 グスクの石積みまで、どうやって登ればいいのか、わからなくなった。
 あるはずだと思っていた道を、見つけられなかった。




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 海に面した地下陣地壕跡の、行き止まりとなるその奥に、
 地上へとつながる道があるのではないか。
 「ヒーフチミー」と呼ばれた縦穴に、梯子か、ロープがあるのではないか。




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 はるか頭上に、遠い光と鉄格子のシルエットだけが見えた。
 ただ、それだけだった。




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 満ちてくる潮の時間はわかっていた。
 それでも、膝下まで濡れた脚は、どこまでも満ち満ちてくる潮の幻影に震え、
 遠い波の音が、遠く、近く、恐怖となって押し寄せてきた。

 このままここにいてはいけない。




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 ふたたび、潮だまりの中へと踏み出した。
 四つん這いになり、巌を掴んだ。

 波が逆巻く岬の下の隆起珊瑚礁は、これまでに歩いたどの海岸よりも、
 深く削られ、鋭く切り立っていた。

 靴底が抉られるのを感じた。
 下腿にいくつかの痛みを感じた。

 初めて、海を恐れた。
 初めて、我を失って、海を歩いた。
 

-2014/12/2 糸満市 喜屋武-


 
category2014 沖縄旅日記③ 冬  time23:38  authorKohagura Erio 

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