2013-08-15

うちなーバス旅情 糸洲 西日に頬を照らされながら

  
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  「この暑い中、お散歩ですか? どこまでお帰りですか?」

  そんなふうに、声をかけたくなるようなご老人。
  眩い西日の中から影のまま、よんな~よんな~歩いてこられて、近づいて。
  三歩進んでは立ちどまり、四歩進んでは深い息。
  まっすぐと前へ、焦点は彼方にあるようで。
  やがて、バス停が作るささやかな影の中で、
  ようやく互いの表情を認め合えるようになって。
   
  そのご老人が、こう、おっしゃるのです。

  「この暑い中、ご旅行ですかな? どこまでお行きなさいますかな?」

  じゅんウチナーンチュの慎ましやかな好奇心からか。
  あるいは、塩を吹くTシャツに玉の汗の旅人を案じてか。

  「大度まで参ります。今日は朝からたくさん、歩きました。
   新城、具志頭から仲座、そして、こちらの糸洲まで。
   もうすぐ、バスが来ますので、大度まではバスに乗って行きます」

  「ほお、それはよろしい。無理はしないのが、よろしいでしょう」

  はにかんだような笑顔が、目を細めて、そう、おっしゃるのです。

  「バスに乗って、大度の民宿で汗を流して、
   それから、あとはゆっくり、海辺で夕陽を見ようと思っております」

  「ほお、それはよろしい。よろしいことですな」

  はにかんだような笑顔は、安堵を浮かべ、
  また焦点を彼方に、東へと向き直るのです。
  そして、もうひとふんばりの決意を、穏やかにまなじりに浮かべ、
  深い息を吐くのです。

  「御宅はお近くですか? まだまだ暑いです。どうぞ、ご無理をならぬよう」



  西日に背中を押され、いくぶん軽やかになったような足取りを見送りながら、
  こんな写真を撮らせていただきながら、ふと、思ったのです。
 
  「バスは一本、遅らせても大丈夫です。
   もうひとがんばりして、波平入口か山城入口まで、歩くのもいいでしょう。
   途中まで、ご一緒してもよろしいでしょうか?」

  そう言って、一緒に西日に背中を押されながら、
  同じ道を歩かせていただいてもよかったかと。

  そして、糸洲のバス停でひとり、バスを待つような旅人は、
  この土地の歴史を素通りはしない。
  そんな眼差しで、ご老人は、声をかけてくださったのではないかと。

  「考えすぎかな」

  日没まであと2時間ちょっと。
  この夕陽に染まる海と空を、やはり、見たい。
  アコークローに染まって、夕凪に包まれたい。





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  「無理はしないのが、よろしいでしょう」

  そのお言葉をリフレインしながら、
  眩い西日の中からバスが現れるのを、待ったのでした。


-2013/6/30 糸満市 糸洲-


 
category2013 沖縄旅日記② 夏  time23:55  authorKohagura Erio 

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