2011-05-09

若葉と若葉が重なり合うように

    
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虫は博物館へは立ち入り禁止。博物館を出て虫の目線になる




     この連休の間、仕事帰りの寄り道で夕暮れから深夜まで飲んだりした以外に、
     これといって休みらしいこともしていなかったので、
     ただ一日、とぅじと休みが重なった日曜日、連れ立って出かけることにした。

     といっても、このところほぼ連日、通っている場所へ。
     いつもと同じように、朝から、勝手知ったる道を通って。

 
     勝手知ったる場所であっても、目線を変え、立ち位置を変えてみると、
     なかなかに面白い。
     見所を知っているだけに、なおのこと面白い。

       
     午後は聴き所を知っているコンサート。
     自然光の射し込む、勝手知ったるエントランスでもいいかも、などと思いつつ、
     勝手知ったる場所ではあるが、ふだんは立ち入ることのないホールに座る。
     勝手知ったる素敵なファミリーの奏でる、勝手知ったるはずの音楽に、
     絵本の読み聞かせが加わって、さらに新たな驚きが待っているという期待に胸膨らませる。


     「絵本と音の玉手箱」


     「うまそう」とティラノサウルスのつかの間の安息、
     その太古の夜空を思わせる子守唄に、さっそく頬が緩む。
 
     駆けて、駆けて、駆けて、駆ける「うまそう」に寄り添い、
     その足どりのように、足どりを鼓舞するかのように加速するベースライン。
     風のように、そして、場面だけでなく物語の移ろいをも奏でる、
     やさしくも力強いピアノの転調。
     一回目は演奏に引き込まれてスクリーンさえ見ていなかった。



     待ってましたの給食番長。
     博多弁で繰り広げられる小さな大活劇を楽しみながら、
     頭のどこかでウチナーグチ脳がアイドリングする。

     「いったー、残さんけ!」
     「やなわらばーたーやー!」
     「あんまー、くわっちーさびたん」



     せんねんまんねん。
     ゆうきゅうのたから。
     「やつらの足音のバラード」
     「Three Views of A Secret」
     南城、洞窟、数万年、ガマ。
     読谷、海岸、数十年、ガマ。
     重なり合う旅路、時間、風景、音。
     織りなすグラデーション。
 
     Methenyの「Travels」が流れたのはここだったか。



     おじさんのようなネコと、子どものようなおじさんの物語が、
     おじさんの子ども心にサバの雨を降らす。
     カタブイのように降るジャズのフレーズに、
     おじさんは傘もさすのも忘れて笑みを浮かべながらも、
     ポンポロロン、ピッチャンチャン。
     突然、顔を出すMonkに、また微笑む。

     「サバー Come Back to Me」・・・なんて、
     勝手知ったる店での次のライブで、ビールを飲んでから言うべきだったか。



     二回目のステージは最前列で、ライブハウス気分。
     「Yeah!」などといった歓声は封印しつつも、体は自由にリズムを刻む。
     そして、物語の世界にまたまた、引き込まれつつ、
     音楽と読み聞かせのインタープレイ、重なり合う表現の醍醐味を満喫する。
     いくつかのメロディのモチーフが、やがて新曲へと発展するのだろうか、
     などという期待も抱く。

     今度は、「うまそう」があの山まで駆けるのを見届ける。     





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     そんなひとときを満喫して、
     「それじゃ、あとはご自由に」と、12年目の夫婦は自由気まま。      
     重なり合う部分と重ならない部分とを、それぞれの心に吹く風にまかせて。

     
     勝手知ったる休日の帰り道でひとり、花を楽しんだ虫はといえば、
     次は新緑の眩しさに目を奪われる。
     重なり合う部分と重ならない部分との、光が織りなすグラデーション。


     通り道にある、初めて門をくぐった禅寺の、
     新緑のプラネタリウムの中でしばし居住まいを正して、
     去った雪の頃を思い出し、未来の蝉時雨や紅葉の季節を想う。

      はる なつ あき ふゆ きせつをくりかえし
                         (「ゆうきゅうのたから」/VISIONS)

     静寂の中で、
     現在、過去、未来、高揚、沈思、遠く、近く、光、影が、
     そして、小さな不安もやはり、重なり合う。    


-2011. 5. 8 九州国立博物館 ~ 光明禅寺 (福岡県 太宰府市)-


-Special Thanks- 
  VISIONSの皆さん(塚本美樹(p, key),間村清(b),HINAKO(vo))
  徳永玲子さん


   ♪当日の様子は、VISIONS のウェブサイトの「Diary」にてご覧いただけます。
    2011/05/08 の記事です。  

    「絵本と音の玉手箱」 at 九州国立博物館ミュージアムホール

 
category日記  time23:49  authorKohagura Erio 

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