2010-03-20

グスクへの道(3)

 
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  7:35AM イソヒヨドリも、まだ寝ぼけていたのか。それとも、何か、むぬかんげー中だったのか




  嘉間良の宿から歩いて10分もかからない、農連市場へ朝食の買い出しに行った時には、
  小雨と大粒の雨とが交互に落ちてくるという空だった。

  真っ暗な空を見上げても、雲の流れは分からない。
  沖縄の天気予報を見たいのだが、テレビはバンクーバーの雪景色ばかりを映す。

  雨が上がれば、予定どおり、平敷屋までバスで行って、
  与勝半島を散策しながら勝連城跡まで戻る。
  このままの雨模様ならば、傘を差して、グスクだけでも見てくる。
  歩けないような雨が続けば、バスを乗り継いで、その時はその時で。

  芋餅の天ぷらと、チンビンの朝食を済ませ、
  昼には宿を出発できるように荷物をまとめ、デイバッグだけを持ってバス停へと向かう。
  雨は上がってきたようだ。



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  6:47AM 安慶田バス停から屋慶名行き27番の始発バスに乗る



  平良川、田場、具志川・・・
  車窓から見る空が徐々に輝き始めるのが分かる。
  と同時に、光に照らされて、雲の輪郭もはっきりとしてきた。

  空が騒いでいる。


  前にもこんなことがあった。
  ちょうど一年前。


   那覇バスターミナル(旭橋)の始発バスに乗り、糸満へと向かっていた朝。
   まちぐゎーのあんまーが売っている島どうふを食べるために、
   一刻も早く、公設市場へ到着しようと思っていた朝。
   しかし、豊見城を過ぎたあたりから、どうにも、車窓から見える東の空が騒がしい。
   なにか、わくわくするような、そんな胸騒ぎ。

   時計と地図を交互に眺めて、決断する。
   白銀堂を過ぎ、そして、糸満ロータリーよりも手前、糸満西区でバスを降りる。

   山巓毛までの細道を、一年前の記憶を辿って、一気に駆け上がる。 

   見たことのないような、見事ないわし雲が空一面に広がっていた。
   近くは国吉、遠くは与座岳の丘陵がシルエットとなり、それ以外は、すべてが朝陽に染まる。
   雲も空も、刻一刻と色彩と表情を変えつつ、静かに、壮大に、
   一日の始まりを彩りつづける。




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  7:16AM 西原バス停。予定を変更し、勝連城跡に最寄のここで、バスを降りる



  迷いはなかった。
  この朝の空を、雲を、グスクから眺めたい。
  これからどんな表情を見せるのか、どんな色に染まるのか、
  とにかく、何かが起きそうな、空、雲、光。

  日の出の時刻はすでに過ぎているが、低層の雨雲に遮られ、太陽はまだ姿を現していない。
  そして、はっきりとした青みを帯び始めた空の中層、高層には、多彩な雲が広がっている。

  そんな空を見上げながら、何度も東の空を振り返りながら、一路、勝連城跡を目指す。
  グスクまで駆ける。グスクの石段を駆け上る。



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  8:00AM 雲間から光の帯が、金武湾に降り注ぐ




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  8:09AM 光はやがて、グスクと、そこに息づくものも照らし始める




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  8:26AM 小さなプロペラ機が上空を通過していく、そんな音さえも届く、
        雨上がりの朝の静寂に包まれた、グスクにひとり




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  8:45AM すべてを突き抜けたような陽光が、色彩を際立たせ、劇的に一日の始まりを告げる




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  8:50AM 視線はやがて、空と雲と光の交響詩から、目の前のグスクの叙事詩へと向かう




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  8:57AM あの日と同じ雲に、息を飲む
        雲の交響詩は、いつしかフォルテシモ
        糸満では民人の暮らしとともに朱に染まり
        勝連では肝高のグスクとともに蒼に踊る



  世界遺産を、ほぼ一時間半にわたって、一人きりで堪能した朝だった。


  その視線は、東の空に酔いしれ、やがて、金武湾、中城湾へ。
  その視線は、一年前に訪れた遠くに霞む中城城跡、一年前に間近に歩いた泡瀬干潟へ。
  その視線は、目の前の石積、御嶽、小さな花、巨木、飛び回り始めたイソヒヨドリへ。

  そして、地図を手に、おそらくこの方向であろうと思いながら、視線は「きむたかホール」へ。



  今年1月に福岡での公演を見た『肝高の阿麻和利』。
  折にふれて、あの日のことを思い出し、また、「あまわり浪漫の会」のブログを見たりしている。

  この日が、三日間にわたる「卒業公演」の中日、
  高校三年生のメンバーにとっての最後の公演の、二日目であることも知っていた。

  きっと、この時間は、すでに「きむたかホール」に集まって、
  昼の部の開演に備えているのだろうな、と思う。


  そのホールへと向かって、歩き出す。


  あの舞台はグスクだけから生まれたものではない、
  きっと、彼らの住む町や生活や空気の中から生まれたのだと、
  その場所を歩いてみたいと、そう思いながら。



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  10:18AM きむたかホール

  センターフライを捕ったり、2アウト一塁でピッチャーゴロを打ったりしている
  そんなワラバー達の中から、いつの日か、きむたかの若者が出てくるのだろうか。



  卒業する皆さんへ、そして、メンバーの皆さん全員へ、
  一言だけ、「ちばりよー!」のメッセージを届けさせていただいた。

  ありがとうございました。

  あの日の「かっちん城」の朝は、こんな静かな朝でした。


  それから一週間後の、あの地震。
  石を積むというプロセスが、卒業生や地域の皆さんとの絆を深めてくれることを祈っています。


-2010/2/20 うるま市 勝連-


  
  1月の『肝高の阿麻和利』福岡公演の際に購入したDVDを、
  実は、この時には、まだ見ていなかった。
  勝連城跡にすぐに来ることができるという確証はなかったのだが、
  それでも、遠からず、来ることになると思っていた。
  見るのはその後にしようと、そう思って、この日を迎えた。

  旅から戻って数日後、泡盛のグラスを片手に、満を持して、DVDを見る。

   「また・・・ やられたな・・・」

  1月と同じ、泣き笑いの表情で、きむたかの若者と、そして、勝連のグスクと再会した。


  『キムタカの夢 沖縄に生まれた奇跡の舞台
     ~現代版組踊「肝高の阿麻和利」勝連城跡公演~』 (あまわり浪漫の会)


-Special Thanks-
  あまわり浪漫の会

 
category2010 沖縄旅日記① 春  time23:57  authorKohagura Erio 

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