2010-02-11

「きむたか」の皆さまへ

  
null



 拝啓

 この週末を皆さんは、バレンタイン・デーとして心ときめかせて迎えるのでしょうか。
 それとも、ご家族、ご親戚の方々とともに、旧正月として迎えるのでしょうか。
 あるいは、「卒業公演」に向けての最後の追い込み、通し稽古などで過ごすのでしょうか。

 さて、高校生、中学生の皆さんと、高校卒業から四半世紀が過ぎようとする私とでは、
 一ヶ月という時間の感じ方やその密度には、大きな差があるのではないか、
 などと思っています。
 そんなことを確信を持って思うのは、かく言う私自身もかつて、そういう時期を経てきたからです。
 ずいぶん、遠くになってしまったけれど。

 そして、卒業を間近に控えた三年生の皆さんは特に、
 この一ヶ月の間に、受験のプレッシャーやある種の高揚感とともに、
 「万感」などという言葉で表せるような感情も抱き始めているのではないでしょうか。
 いつもと様子が違って、「とぅるばっている」どぅしぐゎー、
 皆さんの周りにいたりしませんか?



null


 『肝高の阿麻和利』福岡公演。
 うるま市から福岡市へ、皆さんの代表が来てくださったのは、ちょうど一ヶ月前のことでしたね。
 
 一ヶ月という時間。
 
 私は一ヶ月を経た今も、深い余韻に浸っています。
 こうやって、あの日の感想や想いを書いている今日まで、ずっと。

 皆さんは既に、次の舞台(それは、『阿麻和利』の舞台でもあり、皆さん自身の舞台でもあり)
 へと向けて、それぞれに歩み続けていることと思います。
 その間に、どのような成長を遂げ、どのような発見をし、どのような思い出を作ったのか、
 あの舞台を見た一人として、本当に楽しみです。

 あの時の、勝連から那覇空港、福岡空港、宿舎、会場、二日間で三公演という日々のこと、
 ――いや、すべてはもっともっと、ずいぶん早くに動き始めていたのでしたね、
  「あまわり浪漫の会」のブログで、遡って拝見しました――
 そんな日々のことを折にふれ、思い出していただければうれしいです。

 
 ところで、私が中学生、高校生の頃、「感想文」というものにはずいぶんと苦労させられました。
 どういったらいいのか、単純に「難儀ぃ~」というのもあったのですが、
 本当に感動したこと、その感情って、簡単には言葉になんてできませんよね。
 いや、言葉にできないような感動と出会えること、それ自体が幸せな、大切な体験なのであり、
 その、なんとも捉えようのない感情を、出来合いの言葉ではない、
 自分なりの言葉で表現できたその時こそ、自分だけの、本当の幸せなのかもしれない。
 
 ・・・などと、大人はあれこれと理屈を並べます。
 言葉を弄します。

 正直に書きますね。



null

開演前の福岡市民会館

 
 実は、あの日の、2010年1月10日(日)の夜の部の公演の感想が、
 一ヶ月経っても、いまだに書けないのです。
 でも、自分で書いた理屈によると、その感動の余韻に浸っている私は今、幸せなのであり、
 いつの日か、その感動を本当の言葉として表現できた時に、
 もう一度、さらなる幸せを味わえるかもしれない。
 そんな風に思っています。

 なので、一ヶ月遅れの感想文としては未完成で、再提出ものなのですが、
 それでも、いくつかの忘れられない想いを言葉にしてみたいと思います。



 幕が上がってからしばらく、私は目の前の舞台に見入りながらも、
 頭の片隅では「歴史」「史実」をなぞろうとしていました。
 とりわけ、阿麻和利、護佐丸、そして、尚泰久王という三者の人間関係を、
 どのように対置して描くのだろうか、と。

 しかし、気がつくと私は、舞台上で輝きつづける出演者の皆さん、
 幻想的に、優雅に、時に情熱的に舞い、全身で喜怒哀楽を表現するアンサンブルの皆さん、
 そして、常に舞台とアイコンタクトを取りながら、様々な調べを奏でるバンドの皆さんの姿に
 釘づけになっていきました。
 今、目の前の「肝高」たちの躍動に、夢中になっていました。
 

 感想が表現できない、などと書いたのですが、
 でも、あの日、自分がどんな表情をしていたのかは、よく覚えています。
 頬の筋肉が微笑の弛緩と驚愕の緊張とを繰り返し、
 口角は日常の生活の中ではありえないような喜びを表わし、
 最後はもう、涙腺までも制御できない状態でした。

 8列目という良い席ですべてを見つめた視力2.0の眼は、
 さらに、涙線と琴線を刺激しました。

 クライマックスで、阿麻和利を遠い世界へ連れて行こうとする、
 アンサンブルの方の一人に百十踏揚が追いすがるシーン、
 それを、やさしく、しかし、諭すように首を振り、振りほどくシーン、
 かつて、これほど、儚く、美しく、「無常観」を描いたシーンを見たことがありません。
 その一瞬の動きに、自らの死以上の犠牲を出さぬように望んだ阿麻和利の想いも、
 投影され、表出されているだと思いました。

 ・・・阿麻和利の姿に、戦後の沖縄について学んだ出来事のいくつかが、
   オーバーラップしたりもしました。


 最後まで阿麻和利を演じきった「なーりー」くんをはじめ、
 カーテンコールに応えて勢揃いしてくれた皆さんへ届けたかった想いは、
 私もスタンディング・オベーションの一人であったことを書くだけで、
 十分に伝わるかと思います。


 ありがとう。



null

「春日市少年の船」のみなさんはアートとギャグで歓迎



 ゆっくりとアンケートを書いて、ロビーに出て、またまた、私の頬は緩みました。

 たぶん、あの曲は「平敷屋エイサー」、そして、最後に「唐船ドーイ」。
 アンサンブルの皆さんを中心に、若さ溢れる演舞が続いていました。

 冷静な判断に基づくクール・ダウンなのか、自然発生的な興奮状態なのか、
 プロフェッショナルなファン・サービスなのか。
 ここはロビーだぜ。
 おいおい、明日もあるんだろう・・・。
 そんなことを考えながら、目元を少しだけ光らせながら、私は笑って立ち尽くしていました。


 とりとめもなくなりました。



null

終演後も立ち去りがたい人々は・・・


null

私だけではなかった、というシーン。ドアの外からも拍手



 最後に。

 79名のメンバーが、代表して福岡に来てくれたと伺いました。
 沖縄に残った皆さんも、福岡からのたくさんのお土産と、本当の「土産」を受け取ったことでしょう。
 日々の鍛錬に加え、いろいろなお手伝いやバックアップを通じて、
 先輩たちから大きな財産を受け継いだことと思います。
 いつの日か、福岡へ、ハワイへ、海の向こうへ!


 そして、福岡に到着しながら、残念ながら体調を崩してしまった方もいたと聞きました。

 多感な年頃、本当は忘れてしまいたいことだったかもしれません。
 もし、そうだとしたら、思い出させてしまってごめんなさい。

 でも、これは、私の思い描く勝手な物語なのですが、いつの日かキミが・・・
 キミと呼ばせてもらいますね。

 キミが福岡を訪れ、それは一人旅かもしれないし、
 どぅしぐゎーと一緒かもしれないし、恋人と一緒かもしれないけれど、
 ある日、キミが、福岡市民会館の前に立っている。
 少し遠くを見つめるような目をして。
 あの日から過ぎ去った時間の長さに比例して、静かに立っている。

 やがて、ちょっと苦笑いを浮かべながら、
 あの時の仲間たちのことを思い浮かべたりしながら、考える。

  「一人が欠けた分をみんなでフォローし合えたことも、あの公演のメンバー全員の力だったんだ」

  「そういう意味では自分も、みんなの思い出作りや舞台裏の演出に「一役買った」ってことだよね」

 そんなことを思いながらキミは、もう一度、大きく笑って、
 新しい、楽しい、自分の思い出を作りに、福岡の街へと歩き出す。

 そんなシーンを勝手に想像して、
 私は、『肝高の阿麻和利』 福岡公演のエンディングに書き加えたいと思います。


 皆さん、本当にありがとう。


 来週の卒業公演、がんばってください。

 そして、打ち上げも盛り上がっ・・・。

 いかんいかん、大人になると、感動と酒をセットにする癖がついてしまって。
 ・・・いや、なんでもないです。

                                                     敬具


 追伸

 2月20日(土)の午前中に、私は勝連を歩いていると思います。
 天気がよければ、朝日が昇る頃、平敷屋から勝連城跡まで。



null

   左上に写っているのは、
   『城(ぐすく)が劇場になった』(読谷村教育委員会発行)。
   2008年3月25日、座喜味城でこの冊子を手にしていなければ、
   おそらく、私はこの舞台とは出会えなかった。
   護佐丸さんと阿麻和利さんのお引き合わせに感謝。
   そして、各地の城を野外劇場として活用し、組踊や村民劇まで作り上げる、
   ウチナー・パワーに感服!


-2010/1/10 福岡市-




 特典写真・・・?

null

2009/3/2 撮影。以前にも一度、掲載しました。どこだか、分かりますか?




-Special Thanks-
 あまわり浪漫の会
 読谷村歴史民俗資料館

 
category片想いの軌跡  time23:59  authorKohagura Erio 

Comments

コメントはまだありません。

Add Comments

:

:wink::lol::cry::evil::twisted::roll::idea::arrow::mrgreen::):-(:!::?::oops::-o:-D8-|8-):??:x::-P:|:ase::[]=:[:chin::hahaha::!!::heart::**::!!!::*o*::star1.0::star0.5::star0.0::ahhh:
:
:

Trackbacks

DISALLOWED (TrackBack) DISALLOWED (TrackBack)