2010-01-08

うちなーバス旅情 34番

  
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  午前1時40分、那覇バスターミナルはひっそりと寝静まっている。
  そんなバスターミナルの界隈を歩く人影もほとんどない。



  「安里から国際通りを抜けて、泉崎まで、
  ふつうに歩けば何分くらいの道のりなのか。

  ふつうというのは、だから、つまり、
  沖縄最後の夜だというので、ずいぶんと長い時間、飲み続けた足どりで、
  そして、何度も立ち止まっては、虚ろに漂う景色に名残を惜しんだり、なんていう、
  要するに、そんな、ドランクでセンチメンタルなロスタイムを除けば、という仮定。
  いや、昼間は昼間で、あの人混みの中を歩くわけだから、
  それなりに時間がかかるわけか。

  しかし、今はやはり深夜なのであって、
  歩いている人はいないし、明日には、自分もここにいないわけだし、
  好きな場所で立ち止まって微笑んだり、
  好きな場所でため息をついたりしてもいいってわけ。
  
  休息のじゃまはしないから。

  

  もう、10日も前になるか。


  
  那覇に着いてすぐ、「波布食堂」で、噂どおりの「肉そば」を食べて、
  そうか、あれが沖縄で最初の食事だったな、午後遅くの。
  それで、翌朝のバスが早いっていうんで、バスターミナルの下見に来たんだった。
  階段を登ったり降りたりして、何となく三角形をしているらしいというのが分かって、
  ともかく、明日、乗るバスの時間も、経由地も確認した。
  まあ、天候次第という条件つきだったけど。

  で、せっかくだから、「国際通り」という場所を、ちょっと歩いてみようとしたんだったな。

  ところが、だ。
  いきなり、道に迷う。しに方向音痴。でーじ、だっけ?
  いや、ちょっとした外出のつもりだったから、地図を持たずに歩いていたんだけど。
  それにしても、沖縄で、那覇で、一番、賑わっている場所に出られないなんて。
  久茂地川に出て、また、ターミナルに戻って、なんだか、細い道を行ったり来たりして。

  そうそう、コンビニの「Coco」がある通りに出る時、交差点におじさんがいて、
  ひっきりなしに出入りするバスと、ターミナルを出入りする人たちの、
  まあ、両方の交通整理をしていたんだ。笛を吹きながら。
  そのおじさんと、何度も顔を合わせてしまったりして。
  さすがに、「国際通りってどこですか?」なんて、訊けないよな。
  いや、別に訊いてもよかったか。

  小雨もぱらついてきたし、次の日からの行程を考えると飲みに出るという気分でもなかったし、
  そうだ、リュックに詰め込んで持ってきた資料を、次の日から回る場所の資料を、
  宿に戻ってもっと読んでおかないと、ということを思い出したんだった。

  いや、しかし、「肉そば」はすごいな。
  ポークおにぎりと魚の天ぷら、沖縄で最初の夕食は、スーパーのお惣菜で十分だった。
 


  あれが、もう、10日も前になるか。



  次の朝は、降ったりやんだりで、蒸し暑かった。
  でかいリュックを背負って、宿からバスターミナルまで歩くだけで気が滅入るような天気。
  ていうか、まだ、空も街も真っ暗だったか。
  真っ暗な空から、雨粒が落ちてきていたな、街灯に照らされて。

   「雨がひどかったら、富盛には寄らずに糸満へ直行する」

  そういうリスクヘッジも考えてきてはいたんだけど、
  それだったら、富盛まで行くだけ行って、バス停の屋根の下で、
  次のバスが来るまでの間、空を見て考えればいいってこと。

   「あの年の酷暑や雨に比べれば、三月の小雨なんて」

  そういうことも考えていた。
  あの年のことは、資料や写真でしか知らない。
  だったら、少しでも体感すればいい。
  体感する?
  その程度のものじゃないと分かっていても、やらないよりはいい。
  分かっている?
  分からないから、見に来た。歩きに来た。


  6時13分発、東風平経由・糸満行き、34番のバスは、
  最初の乗客が近づくと、ドアを開け、エンジンを吹かし始めた。

  でかいリュックを背負ったやつが、運転手さんの真後ろに座って、
  発車までの間、あれこれしゃべり始めたりしたもんだから、
  「こいつ、内地からだな」 なんて、思っただろ?


  ここから、本当の旅が始まったんだったな。


  それから、毎日のようにバスに乗った。
  歩いては、また、バスに乗る。また、歩く。
  歩き疲れて、シートで眠ろうと思った時も、結局、ずっと窓の外を眺めていたよ。




  歩き疲れたわけではないんだけど、
  やっぱり、今夜はそろそろ、さんぴん茶をがぶ飲みして、
  って、こういうのも今夜が最後だな、
  とにかく、寝ないといけない。

  明日、那覇空港を飛び立つ。

  たぶん、明日はもう、バスには乗らない。
  なんだか、「とても、お世話になりました」 なんて言いたい気分で、
  今、ここに立っている。

  今日は方向音痴でも、迷子でもないぞ。
  誇り高き酔っ払いの、万感の想いを込めた深夜徘徊だ。


  それにしても・・・

  驚いた、っていうか、ちょっと、笑ってしまったな。
  最後に顔を合わせるのも、34番だなんて。

  明日の、いや、もう今日か。
  今日の始発だな、きっと。6時13分発の。


  また近いうちに、津嘉山まで行く用事ができたから、
  その時には、また、世話になるよ」


 P.S.
  「糸満に、朝一番に着くバスだって、宣伝しておくよ。89番には悪いけど。
  まちぐゎーで食べるアチコーコーの島豆腐は最高だよな!」

-2008/3/27 1:44 AM-



2008年3月18日、34番・東風平線に乗車して以降の旅程については、以下に記したとおりです。

 「八重瀬岳の麓で」 2009-06-03
 「初めてのシーサー」 2009-06-15

 
category2008 沖縄旅日記  time23:58  authorKohagura Erio 

Comments

ゆーみ wrote:

遅くなりましたが・・・
今年もよろしくお願いいたします。

那覇バスターミナルがあの形ってのは、ケービンの那覇駅だったって知ったのは意外と最近のことでして(笑)。

あえての34番線バスだったんですね~。
糸満行くときはあまり早く行かないので、私はいつも89番で直行しています(笑)。

次の旅行で糸満行くときは・・・道の駅糸満止まりかもしれません(笑笑)。

それでは~~。
2010-01-09 time22:55

Kohagura Erio wrote:

ゆーみさん、ありがとうございます。
こちらこそ、よろしくお願いいたします。

なるほど、軽便鉄道の頃の名残りですか。
私も知りませんでした。昔からあの場所はターミナルだったんですね。港も近いし。
ということは・・・現在の南側のホームが糸満線、県庁側のホームが与那原線、
久茂地川寄りのホームが嘉手納方面行きという感じだったのでしょうか?
しかし、それだと駅の構造的に不自然だな、機能的じゃないなと、
心の奥の「鉄心」が呟きます・・・。
南風原での爆発事故の歴史をきっかけに知った軽便鉄道ですが、
平和だった時代にものんびり思いを馳せてみたいです。

さて、今日、あと数時間後、『肝高の阿麻和利』の公演に行ってきます。
なんと、福岡です!
2010-01-10 time05:59

マル金 wrote:

ハイサイ、古波蔵恵里夫さま、
津嘉山のマル金です。

先般はあいさつも無しにいきなりここに書いてしまって、すみませんでした。

あなたのここいつも楽しみに読んでいます。

「津嘉山」という地名が出てきたので、本日も思わず書いてしまいました。

なんだか貴方に会いたくなりました。近いうちにきっと会えるでしょうと思っています。

いつも楽しい話題を有り難うございます。
これからもよろしくお願いします。

それでは、アンシェ~~~
2010-01-11 time01:28

Kohagura Erio wrote:

マル金さま ありがとうございます
いつでも お気軽におこしください。

津嘉山には、昨年6月末におじゃましました。
思うところあって、真地から、一日橋を経て、歩いて参りました。
(復路は約束どおり?34番のバスで旭橋まで戻りました)

一昨年、文化センターにおじゃました際に購入した
『南風原が語る沖縄戦』にも掲載されていた、石塀を見るのが目的でした。
文化センターで、道順や目印となる商店を教えていただいた地図がなければ、
行き着けなかったかもしれません。
感謝いたしております。

その日のことは、またあらためて、書かせていただきたいと思っております。
時系列がバラバラの旅日記で申し訳ありません。

津嘉山は美味しいカボチャの産地とも伺っておりますので、
旬の時期に伺って、味わってみたいとも思っております。

本当にお目にかかりたいものです。
「道祖神の招きに会ひて」というのは、実はいちゃりば兄弟の人の縁ではないか、
などと思っている今日この頃です。
2010-01-12 time00:29

マル金 wrote:

ハイサイ、マル金です。
そうでしたか。。。

いろいろと沖縄を巡っている様子がうかがえます。

リニューアルした文化センターに是非お立ち寄りください。お待ちしています。

ところで、津嘉山完熟カボチャのことなんですけど・・・地元にいる南風原町民にも滅多に届きません。ブランド化されていて、築地市場や京都の割烹などに移出されているようです。

規格外のものならば手に入るんですけど、農家の皆さんはあまり出したがりません。いたしかゆしです。

急に話を変えますが・・・
あなたのまったりとした文章を読んでいると、とても心地いい気分になります。

今夜もゆっくり眠れそうです。

おやすみなさい。アンシェ~~~。
2010-01-12 time01:47

Kohagura Erio wrote:

マル金さま こんばんは。
規格外、格外品が大好きな古波蔵です。

ブランド化 = 幻、というのは困ったものですね。
・・・お酒ではないのですから(笑)
学校給食に使って地元の産品を学んだり、規格外のもので加工品を作ったり、
地産地消の輪を広げることも大切かと思うのですが・・・。
すみません、つい、語ってしまいました。

まったりとお読みいただけて、私もうれしく思います。
書きたい文章が先にあると、どうも、理屈っぽく、また、冗長になるのですが、
沖縄の写真とその思い出から沸いて出る言葉を紡いでいると、
自分でも「別人格?」と思うような、まったり感が出ることもあります。
酔っ払っていいあんべぇだった時のことを思い出すことも。34番バスの夜のように。
それもこれも、沖縄のおかげだと思っています。

一方で・・・
戦争や基地のことなどは、勉強不足や思い違いもあるかと思いますので、
ご指導やご指摘もいただければ幸いです。

では、風邪をひかなように、おやすみなさい。
2010-01-14 time00:49

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