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2012-11-28



ハイサイ、樋川のおじさん

   
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     水流が朝日に光る美しい風景を見て、それだけでも満足だった。

     一度あいさつをし、また、ふたたびお会いしたおじさんから、
     期せずして、この土地の80年の暮らしを伺う。
     坂をのぼった上の住まい、坂をくだった下の田畑、
     坂の上と下とを行き来する日々、そして、
     坂の途中に、暮らしの中心にある樋川(ヒージャー)。
     そんな暮らしの80年を、伺う。

     美しいだけではない時代も、この土地にもやはり、通り過ぎたようだった。
     むしろ、たいへんな時代が当たり前のように、
     ずっとずっと、つづいてきた歴史であったのだと気づく。

      「この坂を、石畳を、米俵やウージの束を、担いでのぼったのですか」
      「樋川で軍馬を・・・。みんな陣地壕掘りに駆り出されて・・・」

     そんなすべてを語ってくださった、おじさん、御年79歳。

     時代は行きつ戻りつ、それでも、この樋川はずっとずっと、
     暮らしの中心であり、潤いであり、安らぎであったとのこと。

     美しい風景を見て、美しいと思って帰るだけでもいいとは思うが、
     ずっと大切に守られてきた場所には、
     その暮らしに根ざした、祈りにも似た歴史があるのだと、
     あらためて教えを受けた。



     ちょうど通りかかった、「内地」からの女子高校生のグループ。
     おじさんに呼び止められ、有無を言わせず、当然のように、
     ちょっと、はにかみながら、ちょっと、当惑しつつも、
     おじさんの話に耳を傾けることになる。
     「内地」からの先客も一緒に、小さな輪になる。

     時代はまた行きつ戻りつ、そして、話はスピードを増し、熱もこもって。
     女子高校生たち、ついて来れているか?消化できるか?
     歴史背景は分かるか?ウチナーグチはわかるか?

     やがて、だれの胸にも届く、時代も場所も問わぬ、おじさんからの最後の言葉。

      「いつでも元気に、あいさつはしようね。
      ここに来てくれる人の中には、あいさつもしないで通り過ぎていく人もいる。
      沖縄ではね、朝もハイサイ、昼もハイサイ、夜もハイサイ、便利でしょ。
      あななたたちも、沖縄で人に会ったときは、元気にハイサイと言いなさい」

     おじさんに一礼して去っていく、女子高校生たち。
     
      「あの・・・、キミたちは女の子だから、ハイサイじゃなくて、ハイタイだね。
      男性はハイサイ、女性はハイタイ・・・」

     「内地」からの先客、おじさんの背中越しに、声をかける。
     おじさん、振り返って笑う。

     おじさん、笑った後、また、さらに深い話を、ゆっくりと語り始めた、
     もうしばらくの、二人だけの時間。


-2012/11/12 垣花樋川(南城市 玉城垣花)-
   


2012-11-27

虫がみている宇宙

    
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     バス通りから ふつうに見える風景 見つけた風景

     光が風に揺れている
     光の森に目がとまり 心魅かれ 足がとまる
     光の森の小宇宙に 見なれた天体や緑色星雲

     歩いていてよかったと しばし立ちどまる
     しばし虫になって しばしすーみー


-2012/11/12 南城市 玉城仲村渠-



2012-11-26

ネコに歴史あり

   
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   拾い読みをしている本の記述に、
   「あーはー、そういうこともあるのか」と目がとまる。

   沖縄のヒージャー(山羊)のことをかじろうと思い、軽い気持ちで買った本の中に、
   沖縄のマヤー(ネコ)のことも書かれてあった。

   沖縄のネコと本土のネコとの、「尾曲がり」という遺伝的特徴の出現割合。
   沖縄では、この「尾曲がり」が極端に少ないという。
   その要因として考えられるのが、

   1.中国から輸入された当時の遺伝子を色濃く保っている
   2.米軍とその家族により持ち込まれた洋猫の影響
   3.県民が尾曲がりを嫌って人為淘汰が働いた

   これまで、ネコの尾のことを気に留めたことはなかったし、
   この考察の一部だけを、恣意的に漠然と、取捨選択する形になるのだが、
   それでも、2番目の説がどうにも気にかかる。


   たとえば、このフェンスの前のネコ。
   その毛並みに、さまざまな出自の痕跡を宿しているようも見える。
   いや、その背後の土地やニンゲン史観に立つ思い込みが、
   そんなバイアスを紡いでしまうのだろうか。


   ネコはニンゲンに近く、しなやかにたくましく。

   フェンスの向こうのアメリカと、フェンスのこちらのオキナワと。
   ウチナー・ネコは「戦果」をあげたのか。
   アメリカー・ネコは「ぴりんぱらん」と鳴くのか。
   ウチナー・ネコだけがゲートで止められるのか。
   アメリカー・ネコは脱走したりするのか。

   ネコはニンゲンに近く、それがゆえに、
   ウチナー・ネコのうやふぁーふじは「喰え残さ」なのか。


   そんなことを、一瞬の邂逅のさなかに思うことができるはずもなく、
   もちろん、問いかけることなんてできるはずもなく。





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    「おいおい、住宅街でジャングル訓練はないだろう」

   そんな軽口を叩いただけの一期一会。

   沖縄的植物相の中に消えて行った後ろ姿を思い出しながらの、
   すべては、旅を終えて後の、むぬかんげー。


   ネコは、悠久の毛遊び。


-2012/11/13 宜野湾市 真志喜-


-参考・引用図書-
 「沖縄の在来家畜 その伝来と生活史」 新城明久 (ボーダーインク・2010)


2012-11-24

長い朝

   
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     光は影を照らします
     影は光の中にあります
  
     弾雨の日々のいく日かは
     それでも朝は 硝煙けぶる朝にも
     こんな朝の光が 射していたかもしれませんね





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     泥濘と石粉と亡骸の彼方から
     だれかが村に戻ってきた朝にも

     だれかがこうやって 朝を過ごしたかもしれませんね



-2012/11/9 勢理城(八重瀬町 富盛)-



2012-11-21

浄朝

    
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     石獅子と ふたりきりで 光につつまれた朝
     恋をしたような 深い会話をしたような





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     この地に過ぎたことと これからのことの 安らかなることを願い
     今日 この朝の喜びを 軽やかに感謝する 


-2012/11/9 勢理城(八重瀬町 富盛)-



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